遺産分割について、被相続人に属した権利義務は、一身専属の権利義務を除いて一切の権利義務を承継することになり
ます。従って積極財産だけなく消極財産(債務)も承継することとなります。積極財産のうち、遺産分割の対象となる財
産については、現金・預金・不動産(土地、家屋)・株式・国債・社債や動産等様々です。
相続人の間で相続財産を分割するためには、亡くなられた方の相続財産がどれくらいの額であるかを把握しなければな
りません。
◆ まず相続財産を調査します。 ◆
1.不動産調査
市町村が管理する「固定資産税評価証明書」を請求し、所在地・地目・面積・評価額等を記載した書類を取得するこ
とができます。また、請求書に請求した土地・建物以外に被相続人の所有している不動産がある場合は「請求した土地
・建物以外に被相続人の所有している不動産があ場合は当該固定資産税評価証明書も発行のこと」と明記すれば、請求
先の市区町村の物件をカバーできます。
また、課税の対象となっている固定資産(土地・家屋)を所有者ごとに一覧表にした名寄帳の閲覧、取得請求をすることにより
その市区町村の中に所有している土地・家屋を調査することもできます。
また、不動産登記簿謄本の取得により、不動産の名義人、賃借権や抵当権等の権利の付着の有無等の確認が必要です。
さらに農地の場合、農地情報等閲覧請求により、貸付地や小作地等の情報を確認することが必要です。
2.預貯金の残額調査
銀行所定の「残高証明依頼書」に必要な書類を添付して請求します。その時に分割協議にそなえて、金融機関への相続
届(口座内儀書換依頼書)の様式や必要書類の内容を確認しておくことにより、何回も複数の相続人の印鑑押印等の手間
が省けます。
3.その他
その他株式、国債・社債、動産、美術品、宝石、骨董品等があります。
◆ 次に不動産の評価をします。◆
分割協議をするにあたって、相続人の要求に応じて不動産評価し相続財産を金銭評価します。そして相続財産の総額を確
定します。
ここで解説するのは、簡易な標準的方法で評価します。
1.市街地の宅地(路線価格方式)
市街地の宅地は「路線価」という毎年国税庁が発表する1㎡あたりの土地の価額を基に評価します。
2.郊外や農村地の宅地、田畑等(倍率方式)
市街地の宅地以外の土地は「倍率方式」によって評価します。倍率方式は原則として「固定資産税評価証明書」の評価
額を基準とします。その価額に毎年国税庁が発表する「評価倍率」の倍率に従って補正します。
*国税庁のHPでは「この財産評価基準は、毎年1年1月1日から12月31日まで(毎年発表)の間に相続、遺贈又は贈与により
取得した財産に係る相続税及び贈与税の財産を評価する場合に適用します。」としています。
*必要に応じて、実勢価格を専門家(土地家屋調査士)に調査依頼することもできます。
◆財産評価基準路線価格・評価倍率表(HPへ)
◆ 上記を基に財産目録を作成します。◆
確認した財産の目録を記載します。この場合、積極財産だけでなく消極財産(債務)も記載します。
① 不動産(添付資料:不動産登記簿謄本、固定資産税評価額など)
② 使用貸借、賃貸借(添付資料:賃貸借契約書など)
③ 預貯金、現金(添付資料:預金通帳、残高証明など)
④ 株式、国債、有価証券など(添付資料:契約書、証券、預り証、配当通知など)
⑤ 生命保険、損害保険(添付資料:保険証書など)
*保険については、受取人の明記などにより分割対象外となる場合があり保険会社の確認が必要です。
⑥ 消極財産(債務など)(添付資料:債務の返済額や返済期間の分かる契約書、返済計画表、領収書など)
*ローン、クレジット、消費者金融等に対する債務の調査については、管理機関等への確認の請求により調査す
ることができます。請求については、必要な書類や手数料が必要となります。
◆銀行系のローンやキャッシング調査(HPへ)
◆クレジット系の契約内容調査(HPへ)
◆消費者金融系の契約内容(HPへ)